03.仮眠室

 知らぬ間に夜は明けていた。
 気が着けば、部屋の中に縮こまってひざを抱えていた。窓から差し込む光に神聖なものを感じた気がした。静かな朝だ。そういえばこの町では小鳥が鳴かない。
 太公望は部屋の戸に手をかける。時間を確かめるために携帯電話を取り出し、懐かしいような悲しいような気持ちでそれを眺める。これが普通に使えたころは吸血鬼なんて映画の中だけのモンスターだったはずだ。
 早朝だ。まだ、楊ぜんは起きられないはず。
 戸にかけた手に力を込めた。
 外へ続く扉にいたる廊下には楊ぜんが昨日とまったく同じ状態で倒れていた。青い髪が縺れて広がっている。ぴくりとも動かない。まるで死んでいるように。
 死んでいるのか?
 頭のどこかがそれを確かめるべきだと彼を諌めたが、正直近づくのは恐ろしい。
 迂回してやりすごし、扉を開けた。
 誰もいない町が広がる。
 彼には考えがあった。
 逃げるのだ。

 楊ぜんの家からひたすらまっすぐ歩くと、楊ぜんと始めて出合った噴水に行き当たる。それが二日前のことだと気がつけば奇妙に思える。もうこの町で何ヶ月も過ごしたような気がする。
 誰もいない町をただ、歩く。空は晴れ渡り雲ひとつない。水色の絵の具だけをぶちまけたように。そのうちに古ぼけた小さな駅舎が見えた。初めてここに降り立ったときにはこんなことになるとは夢にも思わなかった。無人の改札を通り抜け、ホームへ出る。単線の線路はまっすぐつながっている。
 そう。つながっている。
 太公望はしばらくそれを見つめていたが、やがて、よっと小さな掛け声を上げると線路の上に飛び降りた。ホームから線路までは思ったよりも距離があり足にじんわりとした痛みが走った。
 歩くのだ。
 線路は続く。どこか別の場所へと。
 線路をたどれば別の場所につけるはず。
 楊ぜんが起きだす前に、できる限り遠くまで行ってしまう必要があった。楊ぜんの言葉から推測する限り、この異空間とやらは外部からの進入を防ぐためのものであるのだから、逆の中から外への脱出は見逃される可能性がないわけではないのだ。たとえ別の空間に放り出されたとしても吸血鬼と一緒に閉じ込められるよりはましだ。
 入れるのだから出られるはずというのが理屈というもの。
 とにかくできることは全部やっておきたかった。
 枕木をまたいで早足で歩く。砂利道は歩きにくく予想以上に困難だ。
 初めは恐怖によってひたすら足を動かしていた。ちょっとでも休めば楊ぜんが追いかけてくる気がした。床に横たわっていた楊ぜんが床に白い手を着き、それを支点にして身体を起こし、青い髪の間から赤い目が覗き、白い八重歯を紅い舌がなぞる。床の上の楊ぜんは動きがぎこちなくて、そのくせ太公望は決して逃れられない。
 怖かった。
 生物としての異形に対する圧倒的な恐怖。
 未だ冷や汗が流れる。そのちょっと前までは一緒にしゃべっていたのに。
 それまで。楊ぜんは、多少エキセントリックなところはあったものの、太公望の目にはきわめて正常な人間として映っていた。吸血鬼を化け物と言い切り、太公望を仲間から守ろうとし、親切で、礼儀正しい。血に飢える自分自身に嫌悪感を感じながら、自分をその化け物に変えた相手を慕っていた。
 あのときに感じた、嫉妬のような感情を思い出す。
 一瞬でも好きだと錯覚した楊ぜんが、化け物としての本性を現したことは衝撃だった。あの瞳には理性のかけらもなかった。ただ動物的な飢えだけが太公望を捕食対象として見つめていたのだ。
 おそらく、それが楊ぜんでなかったら――たとえば趙公明や妲己だったならば――ここまでの嫌悪感は感じなかっただろう。太公望にとって趙公明や妲己は確かに吸血鬼だったが、楊ぜんは人間だったのだ。
 それが――。

 可哀想だ。楊ぜん。あんなに嫌がっていたのに。

 不意に。恐怖とも嫌悪感とも別の感情がひっそりと浮かび上がった。
 可哀想だ。こんなに恐怖する対象が、こんなに嫌悪する対象が自分自身だなんて。
 不意に立ち止まって、後ろを振り返る。すでに駅舎は見えず町も見えない。あるのは続く線路と常緑樹の濃い緑。この先に、楊ぜんはいる。
 もう、起きただろうか。起き上がって太公望のいないことに気がついて、次に楊ぜんは何を思うのだろう。裏切られたと思うか。太公望が戻らなければ、楊ぜんは死ぬのだろうか。
 死ぬの、だろうか。
 身体が震える。手足がしびれる。死という言葉はあまりにも重い。
 床に転がっていた楊ぜん。動かない楊ぜん。血のように散った青い髪。
 でも、戻れば、自分が助からないだろう。
 だから太公望は町に背を向けて走り出した。
 死ぬわけには行かない。死にたくない。
 だって自分は、電車を間違えただけなのだ。
 楊ぜん、おぬしは自分から選んだのであろう――?
 どす黒いものが胃の中にこみ上げた。
 一歩ごとに足は重く、一歩ごとに吐き気がこみ上げる。目の奥が熱くなり、頭はしびれたように動かない。
 走って走って走って。足が縺れて転んで、また走った。
 逃れたかった。楊ぜんから。自分が楊ぜんを捨てて逃げ出したのだと言うその事実から。
 何も食べていない。何も飲んでいない。口の中はからからで、口内に舌が張り付く。頭は朦朧とし、目も良く見えない。
 どれくらい走っただろう。気がつけば日は落ちかけている。
 遠くに、明かりが見える。
 誰かがランプを掲げている。
 まるで太公望を待っているかのように。
 嗚呼。助かったのだ。
 不思議な感動とともにわずかな違和感。電車の通るはずのない線路。その線路上にある駅。まるで、電車が来ないことを知っているかのように線路の上で待つ人間。
 ゆっくりと。太公望は走るのをやめた。
 惰性でただ歩く。
 予感があった。
 青い髪。白い顔。紅い唇。
「ごめんなさい」
 楊ぜんは言った。まるでそれが彼のせいであるかのように。
「ここからは逃げられないんです。ここの空間は閉じているから」
 太公望はその場にしゃがみこんだ。疲れと絶望とともに、不思議な安堵感を感じながら。
 楊ぜんはそっと太公望のそばに座ると、手品みたいに小さな桃を差し出した。太公望は酷く情けなく思いながら、桃に齧り付いた。泣き出したいような気分だった。
「のぉ。どうして謝ったのだ」
「あなたに酷いことをしたようだから」
 つらそうな顔で楊ぜんは言う。
「酷いことをしたのはわしではないか。わしはおぬしを置いて逃げ出したのだぞ」
 怒ったように太公望は言った。
「でも、僕の本性を見てしまったのなら、怖くなって仕方ありません」
 そういって楊ぜんは悲しそうに目を伏せる。
「あれがおぬしの本性のはずなかろう」
 楊ぜんは不思議そうに太公望を見つめた。その瞳に太公望はますます腹が立ってくる。楊ぜんに対してではない。逃げ出した自分に対してだ。
「おぬしを見捨てたわしのためにずっとここに立っていてくれたのであろう。桃まで用意してくれていたのであろう。そんな優しいおぬしの本性が化け物のはずなかろう?」
 それを聞くと、楊ぜんはくしゃっと笑った。用意された微笑ではなく、感情があふれ出したように。
「あなた、いい人ですね」
「だあほ。こんな卑怯者がいい人のわけないではないか」
「いい人ですよ。あなた一度僕に襲われたのに。憎んだって、いいはずなのに」
「憎めないよ」
 こんなに哀れな存在を、憎んだりはできない。
「それじゃ、まだ僕を信じてくれるんですね」
 ふいに、楊ぜんは立ち上がった。
「信じるも何も、おぬししか頼るものはおらぬ」
 つられて太公望も立ち上がる。桃のおかげで幾分元気が出た。
「いいですか、太公望さん。これから夜になります。わかりますね」
 真面目な顔で楊ぜんは言う。太公望も頷いた。夜になるということは、吸血鬼が起きだすということだ。
「ここから僕の家まで、全力で走っても暗くなるまでにたどり着けるかどうかわからない」
「たどり着けなければ?」
「残念ながら、僕は中途半端な吸血鬼なんです。あなたを守り通すほどの力はない」
 太公望は古ぼけた駅舎を見渡した。
「つまりここに隠れようというわけだな」
「ええ」
 楊ぜんは頷く。
 二人はホームによじ登り、駅舎の戸を開く。駅員室は閑散としている。来るはずのない電車の時刻表が置いてあるのが妙に律儀だ。大きな硝子窓をにらみつけて楊ぜんは言う。
「ここじゃダメです。窓硝子を割られたらおしまいだ。仮眠室が奥にあるでしょう?」
 太公望はノブを回したがぴくりともしない。
「鍵がかかっているようだが」
「そんな」
 楊ぜんがドアを押してみたが結果は同じだった。
「その辺にあるはずです。鍵を探して」
「お探しのものはこれかな?」
 不意に戸口で声がした。これは――。
「公明様どうして――」
 驚きに目を見開きながら楊ぜんがかばうように太公望の前に出た。
 巻いた金髪に派手な衣装。およそ吸血鬼という単語の反対側にありそうな姿をした男が立ちはだかっている。不覚にも、太公望は笑い出しそうになる。ありえないほどの非現実。それが彼だった。
「わらわがお願いしたのよん。楊ぜんちゃん」
 こちらは吸血鬼という単語にぴったりなあでやかな美女が妖艶に笑う。
「ああ、たたき起こされたせいで、寝不足だよ。おやそちらが獲物君だね。うちのマドモアゼルが世話になっているようだ」
「あらん。可愛いのねん。太公望ちゃん」
 くすくすと妲己が笑う。瞳に紅い光が帯びる。ぞくりとした。
「警戒しなくてもよくってよん。わらわたちが用があるのは楊ぜんちゃんだけだからん」
「僕に何の用です」
 警戒心をあらわに鋭い声で楊ぜんが言う。が、妲己と趙公明を相手にすると、どうにも子供が叫んでいるようにしか見えない。これが中途半端な吸血鬼と本物の吸血鬼の差なのだろうか。
「悲しいことを言わないでん。楊ぜんちゃん。わらわたちはあなたを心配しているのん」
「君がどうしても嫌なら、獲物君でなくてもいい。君には輸血が必要なんだよ」
「そんなひつよ……」
「必要ないって言えるのん? 我を忘れたくせにん」
 楊ぜんは黙り込んだ。おそらく、昨日のことを言っているのだろう。
「われわれはね。一回くらい獲物を取り逃がしたところで、平気なんだよ」
「平気じゃないのはあなたよん。楊ぜんちゃん」
「僕たちは君を愛している。同族を失うわけにはいかないんだ」
「それはどういうことだ?」
 黙っていられなくて太公望は叫んだ。
 にやりと笑って趙公明がいう。
「簡単なことだよ。君を食べられないと楊ぜんは死ぬんだ」
 趙公明は肩をすくめて見せる。
「食べられてくれる気になったのん?」
 妲己が紅い瞳を輝かせる。紅い舌がちろりと唇をなめた。
「どうやら。君も愛してくれたようだね、われわれの楊ぜんを」
 二人の吸血鬼は顔を見合わせて、微笑む。
「この人は関係ない!」
 裏返った悲鳴で楊ぜんが叫んぶ。
「ほら、また我を忘れていやしないかい、楊ぜん」
「我を忘れて太公望ちゃんを食べちゃってくれたら。わらわたちとしては大団円なんだけどん」
 はっとして楊ぜんは顔を上げた。
「僕の血を受け入れる気になった? 楊ぜん」
 悪魔のように趙公明は楊ぜんの耳元でささやく。
 ぎろりと楊ぜんは趙公明をにらみつける。
「君は頭のいい子だ。自分の限界は知っているね?」
 逡巡の後楊ぜんは操られたようにこくりと頷いた。
「はい」
 押し殺した声。
「いい子だね。マドモアゼル」
 太公望は何故だかたまらなく嫌な気分になった。

 それはどこか儀式めいていた。
 一歩、楊ぜんが趙公明の前に出る。顔を傾け目を閉じる。接吻をねだるように。長い睫は白い頬に薄い影を落とす。
 一歩、趙公明が楊ぜんに近づく。軽く頬に手を沿えると、楊ぜんの白い首がのけぞる。
 趙公明が楊ぜんに覆いかぶさり
 ――嫌だ。
 楊ぜんが受け入れるように薄く唇を開け
 ――嫌だ、やめてくれ。
 二人の唇が――
 きいっ。
 頬に鈍い痛みが走った。
「嫉妬に血走った目をしていてよん」
 いつの間にか妲己が後ろに回りこんでいた。痛みは妲己に爪を立てられたものだと気がつく。じんわりと熱い痛みとともに血が流れるのがわかった。
「悔しいのん? ねぇ、知っていて? わらわたちが血を受け入れる行為は、キスの変化形なの。でも、その意味はキスよりもずっと深いのよん。わかる? あの子の血は公明様の血と交じり合って一つになるの。それは素晴らしいエクスタシイよん」
 耳元で妲己は囀るように囁く。その言葉は毒だとわかっていながら、太公望はそこから気をそらすことができない。
「わらわとしてみたい?」
「な」
 顔に血が上るのがわかった。
 くすくすと妲己が笑う。
「可愛いのねん、太公望ちゃん。でも、初めては楊ぜんちゃんにしてもらったほうがいいでしょう?」
 血の染み出た太公望の頬を妲己の白い美しい指がゆっくりと撫でる。
「好きな子の血は甘いものん。楊ぜんちゃんだって、ホントは公明様とより太公望ちゃんとしたいはずよん」
 太公望の視界には楊ぜんが写っている。趙公明に抱き寄せられうっとりと目を閉じた楊ぜんが。
 くすくすくす。妲己は笑う。
「楊ぜんちゃんを怒っちゃダメよん。だってしてあげない太公望ちゃんが悪いんだもの」
 くすくすくす。
「でもねん。とっても気持ちいいのよん」
 そう言って妲己はぺろりと太公望の血のついた指を舐めた。
「これくらい、もらわないとねん」
 妲己はするりと太公望から離れると、趙公明の腕を取った。
「公明様、随分とご熱心ですのねん。もう、わらわのことをお忘れになってしまったのかしらん?」
「おお、これは妲己。怒った顔も一段と魅力的だね!」
 趙公明の大声にはっとして楊ぜんは彼の腕から逃れでた。
「おっと、マドモアゼル。鍵をお忘れだよ。夜は危ないからご用心だ! 相変わらず美味だったよ」
 楊ぜんは、きっと趙公明をにらみつけると、ほとんどひったくるように鍵を奪い、そのまま仮眠室に逃げ込む。取り残されては大変と太公望もあとに続いた。
 仮眠室は小さな部屋だった。シングルのベッドが一つに、壊れたような椅子と小さな机。それでもういっぱいだ。
 楊ぜんはドアに内側からがちゃりと鍵をかけると、そのまま崩れるようにドアにもたれかかったまましゃがみこんだ。太公望は話しかけることもできず、ベッドに腰掛ける。
 気まずい沈黙が小さな部屋を満たしていく。
「軽蔑しましたか」
 不意に楊ぜんが言った。
「いや」
 短く太公望は言う。何かいってやりたいのだが言葉にならない。
「これで、当分はあなたを襲う心配はないと思います」
 顔を伏せたままぼそぼそと楊ぜんは言った。
「首に噛み付くわけではないのだな」
 漸く太公望は言葉を返す。自分が何を言っているのかも良くわからない。よくわからないまましゃべっている。
「そんな野蛮なことはしません」
「妲己に顔を引っかかれたよ」
 ゆっくりと楊ぜんは顔を上げた。太公望の頬の傷にためらうように手を伸ばす。触れそうになり、逡巡し、手を下ろしてしまう。
「ひどいことを……」
 小さく首を振って楊ぜんは続けた。
「あの人は結局あなたの味見がしたかっただけなのかもしれません」
「美味かったのかのぉ」
「さあ」
 楊ぜんは首をふった。
「趙公明とは、よく……するのか?」
「偶に」
「わしが嫌だといったら?」
「は?」
 楊ぜんは太公望を見ている。強い瞳。今は紫水晶の。これを真正面から見つめるには自分も強い瞳でいなければいけない。だから太公望は瞳に力を込めた。
「わしの血をやるから、もう趙公明とはするなといったら?」
「莫迦なこといわないでください」
 怒ったように楊ぜんはいう。冗談だと思っているのだ。これが冗談なものか。
「莫迦なことではない」
 太公望は立ち上がった。楊ぜんのほうへ歩み寄る。狭い部屋だから二人の距離は1メートルもない。
 楊ぜんは逃げようとするが、生憎後ろはドアで、逃げ場はない。
 太公望は目線を合わせようと楊ぜんの目の前にしゃがむ。ついで楊ぜんの両肩にてを置けば、楊ぜんは傍から見ていてもわかるほどにびくんと震えた。
「おぬしが好きだ」
「やめてください」
「愛している」
「無理です」
 楊ぜんは目を見開いて太公望を見つめている。これは恐怖だ。
 太公望は楊ぜんを抱きしめてやりたいのに、楊ぜんはそれを全力で否定する。その抵抗すらも抑え込んでしまえるほど太公望の力は強くなかった。もどかしい思いが頭の中を駆け巡る。
「わしが嫌いか」
 まっすぐ、目を見つめて楊ぜんに問いただす。楊ぜんの目の中に逡巡が走り、それからあきらめたように力が抜けた。
「いいえ」
「男同士だから、嫌なのか」
「さっきあなたは見たでしょう。僕たちは性別なんか気にしない。子供をなさない社会ではそういうことは無意味なんです」
 さっき、という言葉の意味にちくりと胸に痛みが走る。
「ならばどうして」
「僕たちは生きている次元が違うし、あなたのことを好きならなおさら、僕はあなたをこちら側に引きずり込むことはできない」
「わしが望んでもか」
 いきり立った太公望に楊ぜんは言った。まっすぐに。強い瞳で。肩をつかむ手に力を込める。楊ぜんは痛そうに顔をしかめた。
「今、あなたは冷静な判断が下せない。僕と趙公明様のことを見て、興奮してるから。だから、一晩、考えてください。僕と一つになるのがどういうことなのか、ちゃんと考えてください。それからでも遅くない。そうでしょう?」
 懇願するように楊ぜんは太公望を見つめる。
 太公望は一つため息をついた。
「他にどうしたらおぬしが手に入る?」
 楊ぜんは困ったように微笑んで、小さく太公望の額に接吻した。
「僕にはそんな価値ないんですよ。外にいる、友達や、恋人や、両親のことをちゃんと考えて。もう寝ましょう。一日ゆっくり寝たら答えが出るかもしれない」
 楊ぜんが灯りを消したので部屋は真っ暗になった。

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