garden----------no.03
「僕は後から出ますから、師叔が先に行ってください」
朝、部屋を出るところで楊ぜんがそういった。太公望は一瞬きょとんとする。
「どうしてだ?」
「一緒に登校っていうのは、まずいでしょう?」
楊ぜんはちょっと声を潜める。
「はあ?」
何がまずいのかよくわからない。
「とにかく、僕と一緒に登校するとあなたまで巻き込まれちゃいますよ」
楊ぜんはイライラした早口で囁いた。
「何に?」
太公望は相変わらずぽかんとしたまま。
「だから、もう! とにかく変でしょう?」
「どこがどう変なのかはわからぬが、同じ部屋なのだから一緒に登校しないほうが不自然であろう? 初日からイキナリ喧嘩したみたいではないか」
「うーん。むしろ仲が悪いと思われていたほうが良いような気も……」
楊ぜんは口の中でわけのわからないことをぶつぶつ呟く。登校時間は刻一刻と迫ってくる。
「おぬしは何、阿呆なこと言っておるのだ。早くせんと遅刻するぞ。ほれ」
ぐいっ。無理やり手を掴んで太公望は楊ぜんを部屋の中から引っ張り出した。
「うわっ。何を」
「走るぞ」
太公望は楊ぜんの手を引っ張ったまま言葉どおり走り出した。エレベーターで待つ時間ももどかしく、階段を駆け下りる。途中すれ違う生徒たちが驚いたように二人を見て慌てて時計を確かめた。
「そんな時間だっけ?」
「いや」
首をかしげる生徒たちをよそ目に太公望は走っていく。
男子寮を出るところで楊ぜんが再び抵抗を始めた。
「師叔この先はまずいです」
「なーに悠長なことをいっとるのだ。遅刻するぞ!」
「まだそんな時間じゃありません!」
「だってもう8時……」
「学校は8時30分からです!」
「だったらもう、間に合わぬであろう!」
これから電車に乗って、乗り換えて、15分ばかり歩いて……
「学校は目の前です!」
「あ」
ぴたんと太公望は止まった。
「あなたはまだ中学校にでも通うつもりだったんですか?」
いやみたっぷりに楊ぜんは言い放つ。身体に刻まれたタイムスケジュールはなかなか消えない。太公望はうっかり中学校と家との距離で時間を計ってしまっていたようだ。ここは学校の中の寮だから学校なんて勿論歩いて5分もかかりやしない。
「あー。その。すまんかったのぉ」
太公望は謝って楊ぜんの手を離した。
「まったく……」
楊ぜんは握り締められたせいで赤く後のついてしまった手首をかばうようになでた。
気がつけば階段を下りてくる見知った人陰がある。
「よぉ! 太公望。朝っぱらから早速痴話喧嘩かよ」
「おお、姫発ではないか!」
「おはよう。姫発」
姫発とそれからもう一人背の高い男。こちらも昨日ファンクラブの空き部屋で見かけた気がする。
「おはよ。楊ぜん。相変わらず綺麗だね〜」
「おはよう。韋護君も相変わらずだね」
背の高いほうは韋護というらしい。大学生にでも見えそうなくらい大柄だ。
自然そのままの流れで4人で学校へ行くことになった。楊ぜんは心なしかホッとしたようなかおをいていた。
寮を出ると、突如として黄色い声が沸きあがる。
「きゃあっ! 楊ぜんくーん!」
太公望はびくりと足を止めた。女子生徒十数人のグループが寮の前で待ち構えていたのだ。集団と化した女の子たちは容赦ない。
「ショック。今日は親衛隊が一緒だよ〜」
「男でああいうのってやめて欲しいよね」
「ねぇねぇ。あの小さいの誰?」
「あれが太公望じゃん?」
「えーっ。あんなのヤダー」
「うそ。可愛いじゃん。小学生みたい」
「可愛いよ。美少年だよ。いいかも」
「よくないよ〜」
姫発がとんっと太公望の背中を押した。押されて太公望はようやく歩き出す。
「気にすんなよ。悪気があるわけじゃないんだからさ」
「だから、一緒に来ないほうが良いって言ったでしょう」
楊ぜんが小声で囁いた。
「いつもああなのか?」
「今日は始業式だからちょっと多いけど、まぁ大抵毎日あんな感じ」
太公望はげんなりした。
「女子ファンクラブは怖いのぉ」
声を潜める。
「あれはファンクラブじゃねーよ」
姫発が言う。
「女子ファンクラブは楊ぜんが疲れるからああいうストーカーみたいなことはすんなってちゃんと禁止してる。でもなくならねぇんだよな」
「ふーん」
太公望は振り返って女子生徒たちを見た。彼女たちはちょっと離れてきゃあきゃあいいながらついてくる。
「きゃあ。可愛いっ。振りむいたぁ」
太公望は慌てて前を向いた。
「アンタもファンクラブができそうな勢いじゃん」
冗談めかして韋護が笑う。
「もてるのはうれしいが、ああいうのはやだのぉ」
「あの子達はね、僕やあなたをみてきゃあきゃあ騒ぐのが楽しいだけだよ」
冷めた声で楊ぜんが言った。
「別に僕じゃなくて他のアイドルとか芸能人とかでも良いんだ。ただ近場に僕がいただけ」
「そこまで言ってしまうのは、ちと可哀想ではないか?」
太公望の言葉に、楊ぜんは答えなかった。つんとすまして歩いていく。
悪気が無いのはわかっていても、毎日ではさすがに嫌になるか……
後ろを歩いてくる女子生徒たちは騒がしく、こちらに聞こえるよう意図的に叫んでいるものまでいる。そういうのに慣れていない太公望は楊ぜんのようにつんとすまして歩くことなんてできやしない。背中にぞわぞわと視線が突き刺さるよう感じる。
「だから、一緒に来ないほうが良いって言ったんですよ。今は4人いるからあの子達も近づいてこないけど、1人のときなんて囲まれて歩けなくなることだってあるんですから」
「1人で出歩かねば良いであろう?」
「そんな簡単にはできないよ。韋護君や姫発にも悪いし」
楊ぜんは形の良い眉をひそめる。
「俺たちは別に良いけど」
「そ、楊ぜんと歩けるのはうれしいし」
「女の子ならそれで良いかもしれないけれど、僕は嫌だよ」
楊ぜんはきっぱりとそういいきった。
「自分のことは自分で解決する」
太公望はちらりと後ろの女子生徒たちを見た。ああいうのはどうにかして解決できるものなのだろうか。わざとのんびりした口調で口を開く。
「しかし、わしが好き好んでおぬしと一緒に登校するのはかまわぬであろう? わざわざ別の時間に部屋を出るのも面倒だしのぉ」
楊ぜんは不満げに太公望を見たが結局何も言わなかった。
校舎は目前に迫っている。白い大きな建物だ。靴箱はクラスごとに分かれており、姫発とはそこで別れた。韋護は驚いたことに同じクラスだった。
「おぬしもA組なのか」
「お、意外そうな顔だな、太公望」
「そんなことはないが」
そうは言ったが太公望は正直驚いていた。A組が特別クラスだと聞いたときから、真面目そうな奴しかいないつまらないクラスなのだろうと思い込んでいたのだ。
「韋護君は結構頭良いよね」
「楊ぜんサンキュー。そういうお前もAクラスじゃん、太公望」
「まぁ、前の学校でも勉強はそんなに苦手じゃなかったからのぉ」
「なんで、謙遜するの? 勉強得意じゃないとAクラスには入れないよ」
楊ぜんは不思議そうな顔で太公望を見る。
「得意と言うのとはちょっと違うのだ」
太公望は適当にごまかした。
教室に入ると席順が張り出されていた。五十音順らしく韋護は廊下側の前から2番目、楊ぜんは窓側の後ろから3番目で、太公望は教室のほぼ中央だった。とりあえず鞄を席に置いたところで、教師がやってきた。
「おはよう。皆揃ってる?」
入ってきた教師は背が高くスマートでおかっぱに似た変な髪形をしているもののかなりの美形だった。典型的なオタク教師を想像していた太公望はちょっとがっかりして楊ぜんを見たが、楊ぜんは見透かしたようにくすっと笑っただけだった。
出席をとった後すぐに体育館に移動する。並び順はやはり五十音順だった。
まもなく始業式が始まる。太公望はあくびをかみ殺す。始業式なんてどこの学校でも同じようなものだ。長々とした校長先生――ここでは院長先生だが――の話をひたすら耐え続けるだけ。たまに耐え切れなくなった生徒がバタンと音を立てて倒れるのだ。
今回は幸いにも倒れる生徒が出る前に式が終わった。
再び教室へ帰る波に乗ろうとしているところで、太公望は立ち止まった。「おはようございます、玉鼎先生」という楊ぜんの声が聞こえたのだ。
玉鼎と言えば、昨日楊ぜんが仕切りと褒めちぎっていた教師である。少なからず興味を覚え太公望は振り返った。
楊ぜんよりも長い髪を後ろで一つに束ねて楊ぜんより背の高い男が楊ぜんと親しげに話をしていた。その周りを女子生徒が遠巻きにしてぽーっとした顔で見つめている。太公望は眉をしかめた。
「何だあれは」
考えたことがそのまま口をついて出た。
「古典の玉鼎先生じゃん。楊ぜんがなついてる」
独り言に返事をされて驚いて顔を上げると韋護がたっていた。
「この学校の先生は変人しかおらんのか」
「それはあたってるけど、あの先生は割りと常識人」
「あの髪が?」
「楊ぜんが切らせないらしい」
「は?」
「これは内緒の話だけどあの人楊ぜんの義理の叔父、って言い方おかしいけど、つまり楊ぜんの父親の再婚相手の兄貴だって」
「なんでそんなコアな情報をしっとるのだ」
「酔わせて聞き出した」
「誰を?」
「楊ぜん」
太公望があっけにとられた顔をしたので韋護は人差し指を一本口の前に立ててにやりと笑った。
「本人には内緒、な? 忘れてるはずだから」
「おぬしら、酷いのぉ……」
「あいつ、悩んでても誰にも相談しないからさ。そのくせ悩んでることは隠せないんだよな」
「何を悩んでたのだ」
太公望は小さく声を潜めた。
「それはさすがに言えない」
その答えにちょっとがっかりしたものの、太公望の中で韋護の株は着実に上がった。
「まぁ、今は悩んどるようには見えぬし、解決したのだろうな」
「だと良いけどな」
周りに人が少なくなってきたので、太公望と韋護も教室へ移動した。
教室では、簡単な自己紹介と翌日の実力テストについての話があり、昼前にはあっさりと解散になった。
教室を出ようとしてふと見ると、教室の前にはたくさんの女子生徒たちが待ち構えている。他クラスの教室に入ってはならないと言う決まりでもあるのか教室の中までは入ってこないが、その視線は確実に楊ぜんと、そして何故か太公望をじっと見つめているのだった。
太公望は廊下に向かおうとしていた足をぴたりと止め、慌てて楊ぜんのほうへと引き返した。
「よ、よーぜん……」
「なんて情けない顔してるんですか」
楊ぜんは容赦なく顔をしかめた。
「それに、どうして僕のところに着ちゃうんですか」
「だって、おぬしなら良い対策を知っておるだろう?」
太公望はそういったが、本当のところ廊下側の韋護よりも教室の奥にいる楊ぜんのそばのほうが安全と判断したからに他ならない。それに韋護は友人らしいクラスメートに囲まれていて、ちょっと行きにくかったのだ。
「あれに対策なんかありません。ひたすら愛想を振りまくか、ひたすら無視です」
「ぬぅ」
そういうのはどちらも得意じゃない太公望は小さくうなった。
「それにしても、あなたと言う人は、彼女たちに絶好の話題を与えてしまったんですよ。言ったでしょう、教室内で僕に話しかけてはダメだって」
「そこがわからぬ、何故わしが話題になるのだ?」
自慢じゃないが太公望、一度として女子にもてたためしなどない。
「あなたはね、僕みたいに整ってるとか美しいとかそういう感じではないですが、女の子に好かれそうな可愛い顔をしてるんですよ、割と。今までは目立たなかったんでしょうが、僕と一緒にいれば確実にそういうのって目立ちます。だって、僕が目立ちますから。1人が輝いて見えるとその周りまで輝いて見えることってあるでしょう?」
「うう」
太公望はなんとなく納得した。納得はしたが。
「おぬし随分と自信過剰だのぉ」
ついうっかり口を滑らせた。
「失礼ですね。僕は自身はありますが、過剰じゃありません。容姿に見合った自身ですよ」
太公望は一瞬絶句し、それから気を取り直して再び口を開いた。
「とにかく、この場をどう切り抜けるのか、それが問題だのぉ」
太公望はこわごわと廊下を見ては、慌てて視線をさまよわせた。このままでは女性恐怖症になりかねない。
「お、楊ぜん良いところにいた」
そのとき、不意に誰かが楊ぜんに声をかけた。太公望は振り返る。
「ぬぉ? オタク教師ではないか」
さっきまで壇上で生徒の質問に答えていた太乙がすぐ目の前にやってきていた。
「何? 太公望。そんなのもうどこで知ったの? それにね、私はオタクじゃなくて、マ・ニ・ア」
太乙はニヤニヤと笑った。
「そんなの、どう違うのだ?」
「フフフ、聞きたい? 話してあげてもいい……」
「聞きたくないです」
ぴしゃりと楊ぜんが口を挟んだ。
「つれないなぁ、楊ぜん。それよりちょっと頼みがあるんだ、一緒に科学準備室に着てよ、太公望も」
「なんなのだ? 明日はテストだから授業はなかろう?」
「いいからいいから」
太乙が歩き出したので、太公望は慌ててそれに続いた。楊ぜんもしぶしぶといった様子でついてくる。教師が一緒だとさすがに廊下の女子たちも大人しかったが、熱っぽい視線で見つめられて太公望はなんだか自分がロボットのような歩き方をしているような気がした。対して楊ぜんは小憎らしいくらい落ち着いて颯爽と歩いていく。
科学準備室は特別教室棟の1階にあった。廊下の一番奥の隅の部屋だ。中は狭くビーカーやフラスコが所狭しと並んでいる。太乙は机の椅子に腰掛けて、にやりと笑った。
「せっかくだからコーヒーでも飲んでく?」
「用があったのではなかったのか?」
太公望はきょとんとした。
「いや、君たちが困ってたみたいだからさ」
「余計なことを……」
楊ぜんが小さく毒づいく。
「楊ぜんはよくても、太公望は困ってたんじゃないか?」
「うむ。助かった。ありがとう」
太公望は素直に礼を言った。
「あれくらい、自分でなんとかしてもらわなくては困りますよ」
「いきなりは無理だよ。楊ぜん」
「だってまた変な噂が……」
「君は気にしすぎ」
太乙は二人に椅子を勧めると、インスタントコーヒーをビーカーに入れて出してくれた。太公望はビーカーを手にちょっと困る。
「大丈夫だよ、洗ってあるから」
「そうではなくて、砂糖か何か無いかのぉ」
コーヒーをブラックで飲むなんて恐ろしげなまねはとてもできない。
「砂糖ね、C12H22O11。ここにあるよ」
太乙が薬棚からいかにも実験に使いそうな小瓶を取り出したので、太公望は恐る恐るふたを開けた。
「毒じゃなかろうな?」
「失敬な。ちゃんとショ糖って書いてあるだろ」
恐る恐る舐めてみると確かに甘かった。砂糖を大盛で3杯入れて太公望はようやくコーヒーにありつく。一息ついたところで、疑問が沸き起こった。
「そういえば、さっき楊ぜんがいっとった変な噂って何なのだ?」
「あなたには関係ありませんよ」
「知っておいて貰ったほうが良いんじゃないの? 太公望にだってこれから大いに関係のあることだろうし」
「僕は言いたくありません」
楊ぜんはつんつんしてそっぽを向いた。
「OK。私から話そう。楊ぜんが転入してきた当初ね、その頃から楊ぜんは女子に人気があって――まぁ、この顔だから当たり前だけどさ――で、当時はまだ可愛げもあって今回みたいなことで困ってたから当時の担任が――私の同期なんだけどさ――こんな感じで楊ぜん連れ出してやってたんだよ。そしたらさ、どうも女子の間でそいつと楊ぜんができてるって噂が立ったらしいんだ」
そのときのことを思い出したのか太乙はにやにやした。
「あいつ本気で困りきった顔して相談に来るもんだから」
「笑い事じゃありませんよ。太乙先生」
楊ぜんは笑っている太乙をにらみつける。
「迷惑な話だが、それは女の先生だったのであろう? 太乙先生は男だから噂は立たぬのでは……」
太公望はきょとんとした。
「違う違う。私の同期も男だったんだよぉ。ホント中学生の女の子って何考えてんだかわかんないよね〜」
「だから笑い事じゃないんですってば」
けらけら笑っている太乙を楊ぜんは恨めしそうににらみつけた。
「しかし、違うなら違うとはっきりいってやればよかろう?」
太公望の問いに楊ぜんはげんなりして答える。
「正面から聞いてくれたら勿論違うって言いますよ。だけど彼女たちは僕には気付かれないようにじんわりと噂を流すんです、流してる意識も無いのかもしれません。ただなんとなく皆が知っているみたいな状態になってしまって。違うと言おうにも誰に言ったらいいやら……」
「それは……嫌かものぉ」
かなり居心地が悪そうだ。
「人事じゃないよ、太公望。今度噂を流されるのは君かもしれないんだからさ」
「わし?」
「一番美味しいポジションじゃないか。楊ぜんと同室ってことは毎日あんなことやこんなことも〜」
「何莫迦なことを言ってるんですか太乙先生!」
我慢の限界が切れたのか楊ぜんが雷を落とした。
「少しは当事者の気持ちも考えてください!」
「えーっ。私は別に、宿題教えあったりとか、悩み事の相談に乗ったりとかそういう当たり前な学生生活を考えただけだけどな〜。何考えたの、楊ぜん。やらし〜」
「黙れっ!」
「よーぜん、やめぬか!」
立ち上がってわなわなとこぶしを握り締める楊ぜんを太公望は必死で抑えた。
「太乙先生も、今のはちと酷かろう?」
「あー。ごめんごめん。調子に乗りすぎたよ。悪かった。楊ぜん」
楊ぜんはまだ膨れていたが、とりあえず椅子に腰掛ける。
「でもね。楊ぜんはそういうの気にしすぎ。あの子達はさ、本当にそんなことがあったなんてきっと自分たちだって信じてはいないよ。あれは憧れをそういう擬似恋愛に摩り替えてるだけなんだから。いちいち気にしないで美形の宿命だとでも思っておきなさい」
楊ぜんはようやく落ち着いたのかひとつ息をついた。
「判ってはいるんですけどね……」
「私は噂なんか気にしないから、なんかあったらここにおいで。太公望もさ。帰りはあそこから出ればいいよ」
太乙はそういって科学準備室からテラスへ通じている窓をさした。窓といっても縦に長いものでこれなら簡単に出入りできそうだ。太公望と楊ぜんは顔を見合わせなんだかあきらめたように笑った。確かにこの出入り口はありがたい。
二人は礼を言って、その窓から外へ出た。
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